Tateru
「点てる」という行為の浸透から、第三の時間を街なかに。
点(た)てる行為の浸透から街なかで第三の時間の開放を目指すプロジェクトTateru。お茶を「点てる」行為を普及・浸透させることで、生産性に潰されそうになっている人に安らぎの時間と場所を提供します。
ナナナナ祭2024では渋谷リバーストリート沿いに茶室を出現させ、来場者の方々にお茶を点てる体験を通して自分自身の時間を過ごす体験をしてもらいました。その様子を、Tateruの副田が振り返ります。
100BANCH GARAGE Programの77期生 (縁起が良い!!!) である私たちTateruは、ナナナナ祭2024で、渋谷の街角に茶室空間をつくり、道行く人に抹茶を振る舞いました。
街なかで茶を嗜むという刺激的な体験でありながら、お茶を一服点ててみると、渋谷の雑踏にいたことを忘れ、ナナナナ祭で様々な新しいことに触れてワクワクしていた心も一度落ち着かせるという不思議な体験を提供しました。
茶室づくりは、OKINAさん協力のもと国分寺で竹を採るところから始め、NOFFさんのござで床や壁を作り、手水舎や躙口なども再現して2プロジェクトに多くの協力をいただきながら渋谷の街に素材感を活かした本格的な茶室を出現させました。
お茶を点ててもらうという体験は茶道具と机さえあれば簡単にできるものですが、お茶を飲むという体験は本来お茶室に足を踏み入れて日常の時空間と切り離すことで始まります。そのため、ただお茶を点てやすい場を用意するのではなく、お茶室をしっかり建てて俗世の時間 (第一・第二にある日常の悩みに囚われる時間) から切り離してお茶を点て、第三の時間に浸れる空間をしっかりと作りたかったというのが製作の意図です。
松下幸之助は“素直”という言葉をよく用いましたが、掛け軸にかけたように「雨が降った時に傘をさす」その素直な心持ちになれるような、第三の時間に浸る≒素直になれる茶室空間をつくりました。
道行く人のほとんどがお茶を点てたことがない・お茶室に入ったことがない人ばかりです。実際にいらしたお客さんのほとんどが茶の湯の文化にあまり触れたことがない人でした。
そんな中で街角に茶室空間を作ったとしても、お茶を嗜む場として機能せず単なるインスタレーションとして鑑賞されるに留まってしまうだろうというのが目にみえていました。
そこで、単に立方体のお茶室空間をつくるだけでなく、手水舎を建てることで街にも場が展開するようにしようと試みました。
手水舎をつくることで茶室に入る前に身を清めるという結界の役割を果たしながら、敷居が高くて入りにくい・どうしても鑑賞対象にしかならない茶室にまず触れることができる街との接点としての機能も持たせました。
実際に手水舎で水がチョロチョロと出ていることから子供が集まってきてそれをきっかけに「お茶を点ててみたい!」と親子で茶室空間に立ち寄っていただく機会もありました。
実際にお茶室空間を建ててみることで、“お茶室”という建造物の趣向がいかに面白いかを実感することができました。茶を交わすために洗練された緊張と緩和が混じり合う場の設計、和むために選ばれた素材感など、一からつくりあげてみたからこそ受け継がれた茶人の様々な技巧に気づくことができました。今回、縁を持って繋がることができた皆様をはじめ、特に建築やものづくりをする方々と議論を進めてまた改良をした茶室空間をつくりあげたいなと強く思いました。
そしてなにより、今回のイベントで課題感を改めて抱いたのは茶室を街に開かせ溶け込ませることの難しさでした。お茶は敷居が高い。これは茶の湯文化がお作法という体系の中で600年守り受け継がれてきたことをある意味示すと思います。その体系を会得する者でしか茶室に足を踏み入れ茶の湯文化に触れることができない。それは今回の体験を振り返っても自分は寂しいと思います。お茶を交わすことでご縁が亭主、隣の人、そして街と繋がることは大変尊いものです。茶を交わす体験というのはもっといろんな人に開かれてもいいのではないか、そういう滑らかな場というのはいかに作れるのか、それが改めて難しさと共に面白さを感じた課題でした。型なしではなく型破りとなるよう、街に溶け込むことができる茶室空間をこの先も探求していこうと考えています。